若者の多くは、「結婚しない原因は、貧乏だ」としている。「貧乏」という言葉は冗談味を帯びているが、その背後には、より複雑な社会的要因が潜んでいる。
公務員として3年間働いてきた張帥さんは、現在のところ結婚は考えていないという。「今の結婚は、相手にマイホームやマイカーの有無といった物質的条件を求める傾向がある。恋愛・結婚になぜマイホームが必要なのか、私にはどうしてもわからない。しかし、誰もがこのような認識を持っており、それが当たり前だと考えている」と張さん。
有名な心理カウンセラーの周若愚さんは、「今の社会は、結婚における幸福というものが、マイカー・マイホーム・結納品など、あまりにも多くの物質的条件でがんじがらめになっている。さらに、一部の恋愛関係のセルフメディアが発表した文章も、理想の相手の条件を高め続けるため、現代の若者自身も影響を受けて結婚に対する期待が高くなり、条件に適う相手をみつけることができなくなってしまった」と指摘した。
多くの人々、とくに男性は、「キャリア上での成功や社会的地位の獲得が実現してはじめて、具体的に結婚相手を探す時間ができ、費用を備えることができる」と考えている。周若愚さんは、「実際のところ、マイカー・マイホーム・高学歴・安定した仕事が揃わなければ結婚できないのであれば、おそらくほとんどの人は、40歳にならないと結婚条件に達することはできないだろう」とため息まじりに話した。
メディア関係の仕事をしている李佳さん(女性)は、30歳になったばかりで、安定した収入があり、普段は仕事・フィットネス・読書にいそしみ、休暇には一人で旅行を楽しんでいる。彼女のように、多くの女性は、クオリティの高い独身生活を送っており、周囲の友人の実例から、結婚後は自分の生活レベルが下がることを心配している。今回取材をした女性からも、「一人の生活はとても快適。なのに一緒に苦労を味わう相手をわざわざ見つける必要があるの?」、「結婚したら、ケチケチ節約する家庭の主婦にならなければならないことがとても怖い」といった声が数多く聞かれた。
これまで、人々はよく、「結婚は人生・愛情の墓場だ」と嘆いていた。結婚すると、嫁姑関係、子供の教育、家計のやりくりなど、細々した家庭内の問題によって、2人のロマンチックな愛情が薄れ、日常的な生活の雑事に追われる羽目になる。しかし、現代社会において、若者が結婚生活の些末な事柄よりも心配していることは、結婚と自己実現との間の矛盾という問題だ。
劉夢さんによると、彼女の理想の結婚年齢は、30歳から35歳の間という。それまでは、より多くのエネルギーを仕事に注ぎ、35歳までに自分の夢を実現させなければならないと考えている。彼女の夢は、世界一周旅行をすることと、自分のフラワーショップかコーヒーショップを持つことだという。「35歳までに夢を実現できなくても、後悔はしないだろう。その時には今結婚するよりも喜んで家庭に入れると思う」と劉さんはしっかりした口調で話した。
英国の大学院修士課程で学ぶ王凡さんは、「結婚は、家庭と倫理に関わるものであり、より多くの責任を意味している。私はより多くの時間を自分が心から没頭できる仕事に費やしたい」と話す。
今年28歳になる大学教員の劉さん(女性)は、2人の子供の母親だ。「家庭を作り、子供を育て、仕事に精を出すことは全て、社会に対する私たちの責任だ。私も夫も、相手のためにいくらかは譲歩し、犠牲になっているが、本質的には、どちらにとってもより良い状態を目指し、共に成長することを望んでいる」と劉さんは述べた。
結婚率と出産率の間には、非常に密接な関係があり、結婚するかしないかは、出産率の直接的要因となる。中国においては、結婚は出産の前提条件となっている。
李建新教授は、あるデータを列挙した。2018年と2017年を比べると、出生数は200万人減少し、0-15歳の児童人口の人口全体に占める割合も継続的に低下傾向にある。16-59歳の労働年齢人口は470万人減少、全体に占める割合は0.6ポイント低下した。一方、高齢者人口の割合は上昇の一途を辿っており、うち、60歳以上の人口は859万人増加、割合は0.6ポイント上昇。65歳以上の人口は827万人増加、割合は0.5ポイント上昇した。
李教授は、「結婚年齢が高まるにつれて、出生数の減少が続き、これによって、中国は少子高齢化の動態プロセスに突入した。これは人口危機のプロセスでもある」と指摘した。
従って、結婚は、単に個人的な出来事ではなく、社会の発展と切り離せない関係を持っている。若者の結婚問題に対応する際に、社会は当人の選択を尊重し、結婚の先延ばし、事実婚、非婚などより多くの選択肢を寛容な態度で認める必要がある一方、家庭・社会・国家も若者を導く責任があり、若者が正しい結婚観を持ち、健全な親密関係を築くようサポートしなければならない。同時に、教育や若者のキャリア発展などさまざまな分野で十分に考慮し、若者にとってより好ましい結婚・出産条件を創出する必要がある。